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24卒の違いと、採用担当者に求められる役割


24卒就活生は自己理解が浅い学生が増える?
~23卒と24卒の違いを知る~

24卒採用戦線は、4月にインターン情報公開、6月にエントリー受付、 7~9月でサマーインターンと既に半年が経過しました。
24卒学生の「インターンシップや仕事研究プログラム等への参加意向」は 「参加したい/参加予定あり」が94.5%(キャリタス就活5月調査)と インターンが就活のデフォルトに既になっています。
弊社の新卒採用は昨年までは秋インターンからの開始でしたが、 本年度は市場変化にあわせてサマーインターンからに変更しました。
24卒の就活生に会う前に今年の特徴を調べていたところ、 本採用が始まったら「今までの学生と違う」と感じる可能性がある背景が2つあることがわかりました。
1つめは大学入試の環境変化、2つめはコロナにより 入学当初から予想と全く違っていた大学生活だったことです。

<2つの大学入試環境の変化>

<変化その1:私大の入学定員管理厳格化>
大学の「収容定員」は教育の質を保つことを目的に文部科学省が決めていますが、 大都市圏の学生集中を避け、地方創造を目的に2016年から私立大学の入学定員に段階的な制限がかかりました。
8000人以上の大規模私大は入学定員の1.1倍を超えると私学助成金を全額不交付、 ペナルティーとして学部新設が不認可になります。 大学運営の経常収入の約1割は補助金で、時代にあわせた学部新設ができない事は大学にとって致命的。 今まで入学辞退者を考慮して定員より多くの合格者を出していた私立大が、 国の基準以下に合格者を絞り込んだため、2017年には難関私立大学の合格率は1割減少。 今までならAランクの難易度に合格できるはずの受験生がBランクに、Bランクの受験生はCランク・・・と 都市部の私大が徐々に難化していきました。
弊社では「今までの失敗したことから学んだこと」を選考時に聞いていますが、 一昨年あたりから「大学入試に失敗した」と答える学生が徐々に増えてきています。 コロナ禍で他の失敗体験が少ないからだと思っていましたが、私大の難化現象を知り合点がいきました。



志望大学の定員減少により合格を手にすることができなかった学生が一定数いるのにも関わらず 大学名だけで判断してしまうと、数年前と同等の学力がある良き人材を見逃してしまうかもしれません。

<変化その2:2021年の大学入試改革>
31年間実施してきた全国共通テスト「大学入試センター試験」に代わり、2021年1月から 「大学入学共通テスト」が開始。社会変化に対応できる人材を育てるため、 知識の暗記で解答できる問題を減らし、グラフや地図・写真・文章などを読みとり考察する 「思考力」「判断力」を求める出題形式に変わりました。
英語の試験も筆記:リスニングの割合が4:1から1:1に変更。 既卒生への移行措置はなく、浪人したら大変と2020年入試の受験生は合格できそうな 「安全圏」での受験をする「超安全志向」になりました。この2020年の受験生が24卒の就活生。
安全な大学を選択をした24卒生は就活でどのような会社選びをするのか観察する必要がありそうです。

<コロナ禍突入のタイミングで大学に入学>

そんな大学受験のハードルを越えた24卒生が高校卒業目前の高3の2月、 新型コロナウイルスが広がり始めます。高校の卒業式や大学の入学式の中止。 4~5月は対面授業が出来ず、6月頃から慣れない教師による手探りのオンライン学習が始まります。
弊社のこの年の新入社員も、入社後の導入研修をオンラインで5月から開始しましたが、 機器に戸惑いながらの運用で、今から振り返ればとても受けやすい研修とは言えないものでした。 企業でさえそうなのですから、アナログ派の多い教育界でのオンライン授業がどのようなものだったのか、 想像に難くありません。そのため、自分で調べてレポートを提出する課題が大量に出され、 「多い課題についていけない」「レポートの勉強方法がわからない」などのつまずきや、「将来の目標に何を学べばよいかわからない」など、 未来への準備に対しての不安が多くあったようです。

同じコロナ禍を経験したとは言え、1年間は通常の大学生活が過ごせた23卒生(現4年生)と、 入学したときからオンライン授業で大学にいけなかった24卒生(現3年生)では 大学生活の満足度にも差が出ています。
「大学での学びは入学前に思い描いていた通りだったか?」という質問に対し、異なった人の割合は23卒58.1%に対し、24卒では77.2%と約20%もの差が出ています。

大学生活の充実度も他の学年比で24卒が最も低く76.1% 。
(23卒は81.7%、2年生84%、1年生88.1%)。 後輩の25卒、26卒と比較しても充実感を得られていないのが24卒なのです。


 

進研アド2021年2月調査より全国大学生活協同組合連合会2021年7月調査より



入学後にできた友達も3年生が一番少なく、「0人」が4.8%(他の学年は2%台)、「5人未満」が22.1%(他の学年は15.7~18.3%台)と、 大学での友人関係の薄さが目立ちます。


全国大学生活協同組合連合会2021年7月調査より


今年は就活の軸に悩む学生が増えるだろうなと、就活生に相談に乗ると声掛けしていたところ、 「説明会やインターンシップ等に参加してみたが、自分の性格や適性、 やりたいことが見えずとても困っている」と インターン参加をキャンセルした学生から連絡が入りました。 キャンセルした企業の人に相談するほど友人関係が希薄で、 大学キャリアセンターに相談するきっかけもないのかもしれません。
ほかにもサマーインターンに参加した学生からこんな質問がありました。
「最近就活を始めたばかりで何をしたらよいかわからないので、自分が今すべきことは何か教えてほしい。」
その日はインターンに既に10社以上行ったという学生が数名参加していたので、 「インターンに行ってみてどう感じているか?」を話してもらうことにしました。
「とにかく興味をもった業界や企業にはまず行ってみる、話を聞いてみる。 そうしたら、ここはいいな、これは嫌だなというのがだんだんわかってくる。」
質問した学生は、同学年の就活生の話に大きく頷いていましたが、 採用担当の私が話すより、同じ年の学生からの言葉は大きく心に響いたのではないでしょうか。
本来ならこのような会話が、大学の学食やサークルなどの友人間で交わされるのでしょうが、 友人の数が少なく、他人と比較して自分を理解する機会が圧倒的に少なかったため、 自分自身を理解し活動できるベースがまだできていないのかもしれません。

自己理解を深められる関わりが必要な24卒

同じコロナ禍の就活生でも、24卒と23卒では様々な違いがあることをお分かりいただけましたでしょうか。

私立大学の定員厳格化で門戸が狭くなり、入試改革回避で超安全志向で大学に入学した24卒。
入学してからずっとコロナ禍で、経験に制限がある学生生活を送り、 友人の数が少なく他者比較が圧倒的に少ないが故に、自己理解が浅いまま大学3年生になってしまったのです。
「普通」の基準がわからないまま、あるいは就活の軸がずれたままやみくもにインターンに参加している学生も例年より多いはずです。
人生の大きな判断をする就活で悩んでいる学生がいたら、社会人の先輩として時には導いてあげる声掛けをしてあげる必要があります。

また、選考が始まった際には背景を配慮した質問を面接の場でしていく必要もあり、 面接官にも対応力が求められてくるでしょう。
23卒では、大学生活を1年体験した後のステイホーム生活の過ごし方を聞くことで、 逆境時の対応を知ることもできました。
24卒はガクチカ(学生生活で力を入れたこと)が書けないからと授業を欠席して探している学生もいるという話も聞きます。
いかに学生の本質を引き出せる対話を面接でできるかが重要です。

24卒採用は就活生がおかれた環境を理解し、今までとは違うアプローチでの質問力が企業側に求められるようになるでしょう。
一方で、学校群のみで学生を判断せず、インターンや面談などで、個々の学生の気持ちを引き出し、 自己理解を深める手助けをするのもコロナ禍での採用担当者の役割ではないでしょうか。


岡田 聖子
岡田 聖子
ワンスアラウンド株式会社 シニアディレクター キャリアコンサルタント(国家資格)

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