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人材育成は、日々の業務の中での「〇〇と〇〇」


成長の糧となる研修のタイミングは?

キャリアコンサルタントが行うキャリア面談を弊社では5年前より実施しておりますが、 ほぼ全員の面談が一巡した今年は対象者を増やして実施しています。 中には今回が2回目となるメンバーもおり、コロナ禍等でこの2~3年はオンライン面談になる場合もありましたが、 対面だからぽろっと出る何気ない一言や表情も確認したいので、今年はできるだけ対面での面談を実施しています。
普段の忙しい日常では、キャリアについてじっくり考えることがないスタッフが、 自分のことをゆっくり考える時間をつくるのも大事なキャリア開発ですが、 悩みを聞くだけではなく成長を感じるうれしい面談になることも多々あります。
今年は並行して「3年で店長になるプログラム(以下、3TPと略)」と称した若手育成研修をスタートしており、 あるスタッフAさんの成長のタイミングにこの研修がマッチし、 非常に意欲的に取り組んでくれておりましたのでご紹介したいと思います。
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<知りたいと思うタイミングで実施する研修は効果が高い>
「You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.」 (馬に水を飲ませてあげようと思って水辺まで連れて行くことはできる。 しかし、水を飲むか飲まないかは馬自身が決めることであり、無理矢理人が飲ませることはできない) というイギリスのことわざがあります。周りの人がいろんな機会を与えて支援することはできるが、 最終的にそれを実行するかどうかは本人のやる気次第であるという意味です。
会社側がいくら良い研修を行っても、参加するスタッフが興味を持っていなければ、 ただ参加するだけのものになってしまいます。
しかし、自身の課題を認識し、それを克服するための学びであったなら、参加意欲は大幅にUPします。 キャリア面談や普段の上司の接し方&成長度の把握は非常に大切です。

スタッフAさんはもともと人をぐいぐい引っ張っていくタイプではありませんでした。 自分はリーダーに向いていないと思っていましたし、店長の様々な苦労を見て、 「店長の仕事は大変そう、自分がもし店長だったらメンタルや体調を崩して“辞めます”と 言ってしまいそうだな・・・」と思っていたそうです。 そう思いながらも、真面目で誠実なAさんは店長から信頼されるスタッフとしてチーフに昇格。 「店長は忙しくて可哀そう」から「店長の仕事を少しでも減らせるよう、チーフの自分ができることは何か」 へと意識が変わっていきました。
その後、後輩が入り、初の育成担当も経験。頑張っている新人の姿を見て、 先輩の自分はもっと頑張って成果を出さねばと思うようになり、 後輩に指示するために店舗全体を考え、自ら周りとコミュニケーションをとるようになりました。
実はこのAさんの店舗は今年の夏あたりから売り上げが伸び、非常に好調な店舗として 注目されるようになってきていました。好調の要因をAさんに聞くと、 「店の人間関係が非常に良い、まるで家族のよう」 「スタッフそれぞれの役割分担がはっきりしていて、責任をもってやり遂げようとしている」と、 「忙しくて大変だがこのメンバーだから楽しく仕事が出来ている、 チーム力が良いので結果的に売り上げが上がっている、この店はもっと伸びる!」と言うのです。

Aさんにはマネジメント視点が芽生えてきており、厳しい店長だが、 この店長だからこそチームが伸びてきているのだと認識していました。
Aさんからみた店長は「まず教え、信頼して任せ、自信を持たせてくれる存在」で、 「任せて信頼するのは大事。信頼されると人は変わる。 期待されていると思うともっと成果を出そうとやる気が出る」と Aさんの実体験から生まれたマネジメント視点を話してくれました。 大変そうに見えた店長の仕事も、徐々に変わっていくチームの様子を目の当たりにし、 マネジメントの醍醐味を体感したようで、自分も良いマネジメントができるようになるために 自分の次のキャリアステップはどうあるべきかを考え始めていたそうで、 そのタイミングで実施された3TP研修に意欲高く参加してくれていました。
「今の自分だからこの研修がすごく響く。2年前だったら、ただ学んで終わりだったかもしれない。 この研修で講師が何を伝えようとしているのかがわかるようになり、 学んだ知識を実践できる場があるのですごくためになる。今の自分に必要な要素が全部詰まっているから、 ここから半年の研修全てがとても楽しみ」と話してくれました。

自分はリーダータイプでないと思っていた以前のAさんとは違う、 力強い前向きな姿勢を感じた面談で、学ぶ側が吸収したいと思うタイミングでの研修の実施は、 意欲と成果に影響があると感じました。


再びの人材不足対策に「成長している」実感は有効か>

2019年以前から続く人材不足感は、コロナ禍で2020年以降に一時的に弱まりましたが、 2022年から再び全業種が人材不足へと大きく揺り戻されています。
人材の流出を防ぐためには、働くスタッフが成長できていると実感できることも大切です。 階層別研修もその対策の1つではないでしょうか。 「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(労働政策研究・研修機構2020年調査)によると、 従業員の人材育成・能力開発の課題として
・指導する人材が不足している 31.9%
・人材育成を行う時間がない 30.2%

を挙げる企業が多いようですが、弊社もこの3TP研修を稼働させるまで長い準備期間を有しましたので、 その気持ちはよく理解できます。



スタッフが何を「学びたい」「吸収したい」と思っているのかは人それぞれですが、 入社3~4年目くらいまでに全ジャンルでの基礎知識をしっかりとつけさせることは、 その後のキャリアの礎になると思います。
今回のAさんとの面談では、階層別研修が 若手のキャリア支援にプラスになっており、会社への帰属意識に繋がっていると感じました。

人材育成は日々の「成長の把握」から始まる

Aさんの面談の帰り、たまたま立ち寄った他店で同じく3TP研修に参加しているBさんから 「自分には面談はないのか?」と質問を受けました。面談対象だと伝えると、嬉しそうな顔をしており、 それぞれがキャリアを一緒に考えてくれる相手を必要としているのだと感じました。
「誰かが、自分のキャリアを一緒に考えてくれる。」
「成長の糧になる階層別研修を用意してくれる。」
働き甲斐とは案外このような人を見守り、成長を促す人とのつながりなのかもしれません。


・学びたいと思う人を把握する。
・学びたいと思うような体験をさせておく。


人材育成は、研修だけで完成するものでなく、 日々の業務の中での「信頼と責任」があってこそのものだと改めて感じています。

「3年で店長になるプログラム」研修参加者の中から、次世代の店長が誕生する日が楽しみです。

※注1:ワンスアラウンドの「3年で店長になるプログラム(3TP)」は、
課題解決力を養うマネジメントとコミュニケーション、基礎知識として人事労務管理、販売促進、ビジネスマナーの5カテゴリーをそれぞれ3つのレベルで行う総合的育成プログラムです。
※注2:面談者の許可を得て掲載しております。

岡田 聖子
岡田 聖子
ワンスアラウンド株式会社 シニアディレクター キャリアコンサルタント(国家資格)

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