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チームに「ビジョン」が必要な理由(わけ)


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チームのトップが行うべき最初の、そしておそらく最も大事な仕事は、 チームのビジョンを自らの言葉で明確に表すことでしょう。
私も店長になりたての頃、上司に「どんな店舗にしたいの?」ということを聞かれました。 初めは具体的なことを答えていました。
箇条書きのように行動の羅列されたものが、ビジョンだと思っていたからです。 経験の浅かった私には、そういった発想しかなかったのです。


「血の通ったお店」

現在、私の店舗のチームビジョンは「血の通ったお店」です。
ワンワードで漠然としたものになりました。私がビームス みなとみらいの店長に着任して約四年半、このビジョンに近づけられるようマネジメントを続けてきました。

この言葉は、私の人と商売に対する想いから生まれました。
小さい頃、母親と買い物に行く地元の商店街が好きでした。 ちょっとオマケをしてくれたり、おつかいをすると褒めてくれたり、 時に叱られることもありました。ですが、その時間はとても楽しく、 安心できて居心地の良い場所でした。何故だろうと改めて考えると、そこに 人と人の間に生まれるあたたかい通い合いがあったからではないかと思います。
あらゆることが自動化され、便利で快適になった世の中だからこそ、 服屋として、そしてひとりの人間として、人とのあたたかい通い合いを大切にしたい。 時代が変わっても、人が人を想うことは変わらない。 そんな考えから辿り着いたのが「血の通ったお店」という言葉でした。

新人スタッフに当店のビジョンを伝えると、「『血の通った』とはどういうことですか?」と 聞かれることがあります。「誰に対しても、人間らしい行動が出来るということだよ」と 私は答えます。「例えば、電車で目の前に妊婦さんが立っていたら、席を譲る。 それは血が通っていることだと思うよ」と付け加えます。
大体の新人スタッフは、それでもピンときてくれません。 ですが、最初はそれでいいと私は思うのです。ビジョンはすぐに身につくものではなく、 環境の中で時間をかけて醸成されるものです。 今日は、私にそう思わせてくれたあるスタッフのお話をさせて頂きます。



卒業の日にくれた言葉

当店で2年間働いてくれたSという学生アルバイトスタッフがいました。 2022年の3月末をもって就職のため退社。その彼が最終出勤の翌日、私にこのようなメールをくれました。 少し長文になりますが、原文のままご紹介します。

「振り返れば、店長にはたくさん迷惑をかけて、たくさん怒られてばかりでした笑。 最初の頃は遅刻ばかりしていました。初出勤もメモ帳やボールペンを持ってこない。 社会人としてのマナーを一からご指導頂くほど、世間知らずな奴でした。 そんな奴でもみんなが温かく迎えてくれました。本当に感謝しています。 僕が遅刻をして店長に怒られた時、『もう絶対に遅刻をしません!』と言った次の出勤で遅刻をしました。 店長からお怒りの電話がかかってきて、僕は『終わった』と思いました。 短いビームス生活だったなあ、と。めちゃくちゃ怒られるだろうと思いながら、 ケジメとして向かいましたが、電車の中でアルバイト情報サイトを見ていたことを覚えています笑。 着いたら店長が怖い顔でストックのPCデスクに座っていました。 そこに辿り着くまでの細道がものすごく足が重かったです。 そして、『すみませんでした』と切り出すと、店長はものすごく優しい笑顔で 『お前、よくきたなあ。大したもんだ』と言ってくれました。 僕は、天使はココにいたんだと思いました。ただ呆れられていただけかもしれませんが笑。 でも、店長はそのくらい懐が深くて温かい方でした。だからこそ温かく、 血の通ったお店の今があるんだと思います。無駄に長くなってしまいましたが、 これまでの二年間は一瞬で、でも僕の人生が大きく変わるほど壮大な軌跡でした。 きっとこの先の人生にも良い影響を与えてくれると思います! 僕の進路は鬼が出るか蛇が出るかの茨の道ですが、きっと乗り越えていけると思います! みんなと店長がいてくれたから!今まで本当にありがとうございました」

ビジョンを浸透させるために

Sは週に2回、多くて3回の勤務で、決して長い時間を共にしたわけではありません。 にもかかわらず最後に「血の通ったお店」という言葉と、その実感を私に伝えてくれました。

どうして学生である彼にも、私のビジョンは浸透したのか。

振り返ると、3つのポイントがあったように思います。




1.率先規範
暑苦しいかもしれませんが、私はスタッフをファミリーだと思っています。 そして、それを言葉にして伝えてきました。一人ひとりの人間をファミリーの一員としてお預かりしている。 だから成長させる責任がある。
そうした思いをもって、全てのスタッフと接し続けています。
あるスタッフは私がいない時に、「店長ってさ。店長というより父ちゃんだよな」と笑っていたそうです。

2.言い続ける
スタッフがお客様からお褒めの言葉を頂いた時、成果を上げた時、「血が通っていたね」と褒めます。 また、ミスをしてしまった時は「仕事に血を通わせられていたか?」を問います。 自らが決めたビジョンです。スタッフの頭の中に残してもらうには、躊躇わず、 くどいくらい言葉にし続けることが必要だと感じます。

3.時には笑いにする
ラフなコミュニケーションの場で、またはくだらない冗談の中で、ビジョンにある言葉が出てきたら最高です。 ビジョンは生真面目でなくてよいのです。発信者である私自身が、時々冗談にするのですが、 スタッフがそうしてくれた時が、彼らが頭に残してくれているビジョンが腹まで落ちてくれた時だと思っています。

ビジョンを絵に描いた餅にしないために、私はこの3つを繰り返し続けています。即効性のあるお話ではありません。
ですが、腰を据えて少しずつ進めていくことで、ビジョンはチームの何より大切な基盤となり、 店長の色が見える店舗になるのではないでしょうか。

最後に、とても嬉しかった話をもうひとつ。

長年私の近くで次席を務めてきたスタッフが、店長として異動した際、こんなメールをくれました。
「武島さん、ぼく、店ビジョンを『血の濃いお店』にしました。笑」

明日も売場と向き合いたいと思います。

武島 幸宏
武島 幸宏
ワンスアラウンド株式会社 ビームス みなとみらい 店長

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