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SDGsへ、SCが問われる課題と目標とは?


ショッピングセンター(SC)の未来を考える ―第11回―


1月26日から28日の3日間、日本SC協会の全国大会が横浜で、今年はリアルで開催され、 ビジネスフェアには弊社も出展しました。
延べ来場者数は、21,000人強(2年前対比40%)でしたが、通路幅の確保等の感染防止策が講じられた会場内で、 フェイスtoフェイスでの情報交換を図ることができました。
会場内の出展ブースでは、
 (1)DX支援のための情報システム関連企業の新たな提案や
 (2)SDGsへの取り組みをアピールする企業が多くみられました。


SC及びテナントのSDGs取り組み状況

今回は、「サスティナブルな社会の実現」に向けたSDGs(持続可能な開発目標)についての 取り組み事例を取り上げてみたいと思います。

商い創造研究所の松本代表は、このサスティナブルな社会を実現した街として、 米国オレゴン州ポートランドに注目し、2007年からそのライフスタイルを体験するツアーを開催。 現在まで延べ750人を超える方々が参加しています。
食品スーパーの「ニューシーズンズマーケット」を毎回訪ねているそうですが、 地産地消を掲げて、生産者が安心安全な作物を継続して生産し、店頭には常に良質な商品が並び、 そこには「家庭や飲食店に至るまで、地域経済の循環を可能にする」という考えがベースにあるそうです。

環境保護をはじめ、サスティナビリティ(持続可能性)への対応は、小売業界では、 イオングループ、 セブン&アイホールディングスや 丸井グループが早くから強化していました。
2020年10月、政府は2050年にカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を合わせてゼロにする)を達成すると宣言しましたが、それ以降太陽光や風力など、「再生可能エネルギー(略:再エネ)由来の電力使用」による 脱炭素の目標値を示しながら取り組み宣言する企業の商業施設が増えています。

具体的には、
・イオンモールは、国内全施設を2025年までに再エネ化を実施する。
・ルミネは、非化石証書の購入を通じての再エネ電力導入を順次スタートさせ、
 施設内全使用電力の30年度までの切り替えを目指しています。
・三井不動産は30年度を目標として、国内全施設の共用部の使用電力を実質 「再エネ化」すると発表しています。

また、「サスティナビリティ」を新たな企業方針の核に据えたSCのディベロッパー企業も多く、 東神開発、 東急グループの東急モールズデベロップメント、 パルコやルミネがプロジェクトチームや推進チームを作っています。
今回は、そのような中での取り組み事例をいくつかご紹介したいと思います。




取組み事例(1)  循環型社会の実現に向けたSCの取り組み


トレッサ横浜 (トヨタオートモールクリエイト社が運営)は、昨年7月から共用部に「衣料品回収ボックス」を常設し、 お客様が不要となった衣料品を回収し、再利用する活動「衣料品回収プロジェクト」をスタートさせています。

回収ボックスの横には、「ご不要な衣料品に次の活躍の場を」とのメッセージが書かれています。

このプロジェクトは、横浜市と民間事業者が運営している「ヨコハマSDGsデザインセンター」を通じて 企画を進め、回収した衣料品は、繊維のリサイクルに取り組んでいる横浜の「ナカノ(株)」に引き渡し、 素材や品質によって選別し、古着として世界中に流通させるほか、繊維を再利用して、 「ウエス」「手袋」「建築材料」などに加工し、CO2の排出削減にも取り組んでいます。

そして、再利用品のうち、「手袋」をトレッサ横浜が購入し、 館内や地域の清掃作業等に使うことで、「循環型社会の実現」に取り組んでいます。
担当部長にお聞きしたところ、月間約1トンの衣料品の持ち込みがあるそうですが、 このプロジェクトを通じて地域のお客様や従業員の「環境への関心」を高めて、 「施設価値向上と持続可能な社会実現」を目指しているそうです。

回収までの取り組み事例はありますが、繊維を再加工して新たな商品にし、 それを施設内で使用するという「資源循環型の取り組み」がトレッサのポイントだと思います。
取組み事例(2)  環境配慮型店舗が「共感」を得るカフェ

東京の皇居外苑の東側の和田倉門にカフェの「スターバックス」があり、 昨年末に訪ねてきました。
80席ある約120坪の店内は、高い窓が印象的で開放的な空間ですが、ゆったりとした店内には 幅広い年代の客層のお客様が来店されていました。
この店舗は「環境負荷を減らす」ために様々な実証実験の拠点として開店したとのことです。 (国際認証「Greener Stores Framework」を取得)

私もそうでしたが、思わずスマートフォンで店内を写す人が多かったです。
来店客は「体験」をスマホに残し、SNSに投稿しているのではないでしょうか?

<取組み内容>
■従来店より、使い捨てコップの使用は75%減を目標としています
  店内利用時 ― マグカップや樹脂製のグラスを使用
  テイクアウト ― 貸出カップの利用を勧めています

■店舗の内装材、什器、及び演出用材には、国産材や廃材を活用
  テーブル、椅子     ― 国産材を使う
  内装での演出アート  ― 廃棄予定のキャンバスや漁網、
  天井からのガラス照明 ― 役目を終えた蛍光管から取り出したガラスを
                活用 

■店内手洗い用の水は、循環型システムを採用し、「98%は循環利用」
  自律分散型水循環システムを開発する「WOTA」と協業し、
  水道水と繋がっていない水循環システムを設置しています。

スターバックスは、環境配慮型店舗を世界中で展開していますが、 お客様(消費者)からは、商品だけではなく、「そこに『共感できる価値』があるか」が問われており、 サスティナビリティ(持続可能性)が非常に重要な行動指針とされています。

今回、見えてきたこと。学んだこと。


お客様は、欲しいものがいつでも手に入り、便利な使い捨て商品が溢れた中で、長年便利さを享受してきました。

小売業界においては、商品が売り切れ、買いたい人が買えないという「機会ロスを避ける」ことが 重要であると信じて取り組んで来ましたが、その裏返しが 「大量生産・大量廃棄の歴史」だったのかも知れません。 「ゴミの減量」や「リサイクル」は、「消費する側の努力」が注目されていましたが、 最近はその視線が企業に向かう機会が増えてきたのではないでしょうか?
その一つのキッカケが「恵方巻騒動」だったと思います。 2017年に大量廃棄された写真がSNSで拡散され、議論を呼びました。 廃棄が前提の多めの発注ではなく、売り切るための適正な販売数や値引き額が求められています。

<SDGsウェディングケーキモデルの3つの階層>

SDGs概念を表す構造モデルとして「SDGsウェディングケーキ」 (スウェーデンのレジリエンス研究所が考案)と呼ばれるモデルがあります。


17の目標のうち、頂点に「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」が置かれており、 その下に「経済圏」「社会圏」「生物(環境)圏」の3層に目標が分類されて配置されています。


この並びには意味があり、「経済」の発展が生活・教育などの社会条件の上に成り立ち、 「社会」は「生物(環境)」の住む自然環境に支えられていることを示しています。
■土台となる1段目は、生物(環境)圏で、「持続的な発展のための土台と
 なる自然環境を整える」4つの目標があり、
    キーワードは「環境問題」と「気候変動」です。
■中間層は、社会圏で、「人々の生活基盤となる社会環境の整備」を目指す
 8つの目標があり、
    キーワードは、「健康」「差別・偏見」「教育」です。
■最高層は、経済圏で、「社会で働く人々の働きやすさや人や国に対する差別
 や偏見をなくす」4つの目標があり、
    キーワードは、「経済成長」「働きやすさ」「技術革新」です。

「社会圏」「生物(環境)圏」の達成なしに経済の発展はありません。
ウェディングケーキモデルは、3層それぞれの目標を達成して初めてバランスを保ち、 持続的な社会を作り上げることが可能になるのです。

SCが問われる課題と、取り組むべき目標は?


17の目標があるSDGsの領域は極めて広く、それぞれの目標が相互に関連しあっていることが分かりました。
開業以来、半世紀以上が経つ東神開発の玉川高島屋S•Cは、「開業当時の倉橋氏が掲げた理念を継承しながら、まさにSCを起点とした街の持続的な成長と発展」を遂げていますが、 まさに今回取り上げたSDGsに対する取り組みを様々な形で実践されているのではないでしょうか?

SCにおけるSDGsの取り組み課題と目標としては、

経済圏に分類されている目標の中では、
■ 「目標8:経済成長と雇用 (働きがいも経済成長も)」
 ・環境や社会の課題に取り組みながら、働き方改革推進が問われています。

■ 「目標12:持続可能な生産と消費 (つくる責任使う責任)」
 ・トレッサ横浜の事例のように環境に配慮した循環型が問われています。


社会圏に分類されている目標の中では、
■ 「目標5:ジェンダー (ジェンダー平等を実現しよう)」
 ・SCにおいての利用者や現場で働く女性の比率は高いですが、
  経営者や管理職の比率が低く、女性進出が求められています。

■ 「目標11:持続可能な都市 (住み続けられるまちづくりを)」
 ・健康で快適に住み続けるためには自然災害にも強い都市作りが求められています。


これらの目標を念頭において、
SDGsを経営課題としてとらえて、その取り組みを様々なかたちで具現化しながら、 その輪を広げていくことが求められるのではないでしょうか?

馬場 英喜
馬場 英喜
ワンスアラウンド株式会社 顧問

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