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障がい者雇用の「業務切り出し」は『一億総活躍社会』への第一歩



ワンスアラウンドの『現場マガジン』 2021年10月27日号


皆様、こんにちは。
ワンスアラウンドで新卒採用を担当している岡田聖子です。
今週は、『人を育てる』シリーズの第17弾。
今回は、各企業が法定雇用率への対応を迫られている「障がい者雇用」について考えてみました。 意外に知らない様々なルールをご紹介するとともに、取り組みをスタートした弊社の事例から、 「一億総活躍社会」につながるヒントを感じていただければと思います。

人を育てる法則 【vol.017】

障がい者雇用の「業務切り出し」は
        『一億総活躍社会』への第一歩

障がい者の法定雇用率が2021年3月1日から引上げられ、従業員43.5人以上を常用雇用している事業主は、 2.3%以上の障がい者の雇用が義務付けられました。
(法定雇用率=会社常用労働者に対する障がい者の割合)
年々増えていく法定雇用率への対応にお悩みの企業も多いと思いますが、 弊社も例外ではなく、研修・コンサルティングを行うとともに、 販売代行会社として他社様の店舗をお預かりしている以上、何か不手際があってはいけないと、 障がい者雇用についてはこれまで躊躇しておりましたが、 時代の流れを踏まえて採用にチャレンジしてみようという事になりました。
初の試みで知らないことばかりのため、まずは障がい者雇用の背景を調べ、 理解するところからのスタートでした。
企業にとって、障がい者雇用は経営課題の1つでもありますが、詳しくご存知ない方も多いと思いますので、 まずはその概略をお伝えしたいと思います。


<これから増える?小売業での障がい者雇用>


令和2年度の厚生労働省調査によると、新たに義務付けられた法定雇用率2.3%に対し、 企業全体の平均雇用率は2.15%と未達です。業種別でみると、卸売・小売業は2.00%で、 15業種中9位【図1】。雇用率の達成企業の割合で見てみると、企業全体の平均は48.6%。 卸売・小売業は38.8%で、15業種中11位と下位に位置しています。
しかし、同年の産業別就職件数の構成比でみると、2位に卸売・小売業(11.7%)が入ってきます。 (1位:医療・福祉38.3%、3位:製造業11.5%【図2】) 今後は、小売業への就職件が増えていくにつれ、小売業界で働く障がい者の割合は増えていき、 業界の法定雇用率や達成企業割合も上がっていき、 それとともに小売業界は障がい者の方とともに働く為の組織デザインを考えていく必要性が 増えていくのではないかと思います。


図1:障がい者雇用状況の集計結果
図2:障がい者の職業紹介状況等

<障がい者雇用の様々なルール>


次に障がい者雇用率の計算に必要な人数のカウント方法と、雇用率未達の場合の罰則を見ていきましょう。

障がい者の種別とカウント方法
障がい者としてカウントされる対象者は、 下記の4種類の各自治体が発行する 「障がい者手帳」を持つ人に限られています。

身体障がい:身体上の障がいを持つ人

知的障がい:知的機能に障がいを持ち、知能指数(IQ)が一定の水準に満たない人

精神障がい:精神的な障がいを持ち、日常生活に困難をきたしている人

発達障がい:脳機能の発達の障がいを持つ人
(アスペルガー、ADHDなど)


常用雇用で働いている障がい者を「1人」としてカウントしますが、重度の方は「2人」として、 短時間労働者(週あたり労働が20時間以上~30時間未満)は「0.5人」としてカウントするなど、 障がいの重さによる雇用側の負担等も考慮されています。

法定雇用率未達の罰則
法定雇用率2.3%に達しない企業は、以下の罰則が課せられます。

◆納付金を納める
常用労働者数100人超の企業の場合、1人不足するごとに月額5万円の納付金を納めなければなりません。 (逆に、法定雇用率達成の企業は、超過1人あたり月額2万7千円が支給されます。)
◆行政指導が入る
ハローワークより雇用計画の作成が命じられ、計画が遂行できていない企業はさらに勧告が行われます。
◆企業名が公表される
上記の指導によって状況が改善されない場合は追加の特別指導が入り、 厚生労働省のホームページで企業名が公表されます


<企業が障がい者を雇用しない理由>


上記の対策が取られていても、法定雇用達成企業の割合は半分以下というのが現実で、 約8割の企業が「会社内に適切な仕事がないから」を雇用しない理由にあげています。



「適した業務は本当にないのか?」を4つの視点で検討
弊社では、接客が主となる店舗勤務は難しいだろうと、まず始めに本社での事務作業を検討しました。 しかし、IT化の流れによるペーパーレスの進行などで事務作業が減少しているため、 お願いできる業務量の確保が難しくなってきます。
大企業であれば、ある程度の業務量はあるのかもしれませんが、 中小企業ではなかなか難しいのが現状です。
そこで、改めて店舗に目を向け、「障がい者には無理」と決めつけずに店舗業務を見てみると、 バックヤード作業などの「業務切り出し」を適切に行えば、 障がい者の方にお願いできる業務があるのではという結論になり、 4つの視点で店舗業務の棚卸を行いました。


<業務棚卸し4つの視点>

難易度が低く一度覚えれば同じ事を繰り返して進められる業務

誰が行ってもほぼ同じ結果になる業務
(専門的知識、高度な判断力&意思決定が不要)

納期が比較的緩やかで、スポットではなく常に発生する業務

顧客や他部署などとの調整や交渉が少ない業務

店舗のクリンリネスをはじめ、ストック整理(商品の荷出しや返品商品のピックアップ含む)、 セール商品のシール貼りなど、今まで分担して行っていても、意外に時間がかかっていることがあります。
これらを集約すれば、障がい者の方の雇用に必要な業務量になり、他のスタッフはその時間を、 今まで手を付けられなかった仕事や、創造性が必要な「考える」時間にあてられるのでは?と考えました。

ちなみに、この「業務棚卸」で出た難易度や実施頻度別の「業務切り出し」は、 障がい者向けだけでなく、子供の急な発熱で休む可能性が高い育休復帰直後の主婦パートや、 介護をしながら働く方にも併用できると、社内の別の会議でも話題になりました。

障がい者雇用を考えることで、働き方に配慮が必要な他の社員の業務改善のアイデアにもつながり、 『一億総活躍社会』が目指す姿に一歩近づくきっかけになりました。

お互いの業務や役割が「業務切り出し」で「見える化」されることで、それぞれの存在意義がはっきりします。
職場で自分の存在意義を感じることは、どんな人にとっても大切な事です。
今回の店舗業務の「見える化」と「業務切り出し」が、多様な人にとって 働くモチベーションに繋がることを願っています。


*今回に続いて次回は、弊社が障がい者雇用を検討するにあたり、
 トライアルで実施した支援学校の実習生引き受けについてお伝えする予定です。




最後までお読みいただきありがとうございました。

ワンスアラウンド株式会社 シニアディレクター
キャリアコンサルタント(国家資格)

岡田 聖子

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